目的と理念
森林セラピーというと、森林、山を想いうかべる方が多いかと思いますが、山登りでもなく、自然観察会でもなく、ハイキングでもなく、ゆっくりと無理なく森林内を散策するものであるとまずお伝えしたいと思います。そしてロードの道すがら、新鮮で清々しい森の香りを身体いっぱいに取り込んで、私たちが本来持っている五感を総動員して森を感じ取る。非日常の体験から心と身体に元気を取り戻して日常生活にお戻りいただくことを目的にしています。森林セラピーの効能について科学的医学的な証明はNPO法人森林セラピーソサヤテイや高島市役所森林セラピーのHPをご覧ください。 そもそも地球上に人が誕生して100万年ですが、少なくとも石器時代・日本では縄文時代まで人は森の中で暮らしていました。森というものは人にとって他の食肉獣から身を隠す場所であり、住処であり、食べ物をもたらす恵みの場所でありました。縄文時代だけでも1万5千年以上、森を離れて暮らすようになった私たちはまだ2千年ほど。 森を安心安全な場所として遺伝子に組み込まれた潜在意識は現代を生きる私たちの身体に刻み込まれています。だから、緑を見ると癒されるし住む街中に樹を植える、植物を楽しむ気持ちが自然に生まれてくると考えます。
五感を使ってとか五感を総動員してと一口に言いますが、森の中でいったい何を感じるのでしょうか？ 考えてみましょう。
それは「光と影の木漏れ日と色合い」です。
それは「音（せせらぎ・風）鳥のさえずり・そして静けさ」です。
それは「森をただよう空気の香り、土の匂い」です。
それは「木の実や葉っぱの味覚」です。
それは「太陽の暖かさ、コケの温もり・小川の水の清涼さ、風の動きや樹木の樹皮の感触」です。
それは「音や振動の揺らぎ」です。
それは「あなたが感じている気持ち」に気づくことです。
現代を暮らす私たちは視覚と聴覚の働きに偏って頼って生活していることが自律神経の変調をきたす遠因になっていると専門家が言っています。また、パソコンやスマホのブルーの光も心と体に良くない影響があると最近云われています。森の中で五感をフル稼働させることでバランスを取り戻すことができると考えられています。
さて、さあ、みなさん、気が付いてくれましたか？。五感と言うけれど五つ以上あるじゃないか？。私たちが忘れてしまった、意識しなくなってしまった感覚がまだまだ他にたくさんあるかも知れません。現状、最後から二番目に書きました「揺らぎ」が一番、こころと身体に響く良いものかもしれないと精神科医の先生が仰っていました。
揺らぎは自然の中にあるだけではなく、実は私たちの体の中にもあります。心臓の拍動（脈拍）血液やリンパの流れ、消化管の運動などです。一定の間隔で拍動していないと困るじゃないかと思われますが、実は僅かな揺らぎがあります。こうしたからだの中の揺らぎと自然の揺らぎが同調した時、人は安らぎ癒しの中に包まれるというものです。自然の中で揺らぎとは、音と振動だけではありません。考えてみると耳鼻目口膚の感じる全てが時間と共に常に移り変わり一つとして同じものはないことを考えると、すべてが揺らぎだと言えます。
また、これに関連して、常に変わりゆくものですから、その感じている今、ここ（NOW&HERE）。一つとして同じものがない今ここを大事にして丁寧にゆっくりと感じてみることが大切になります。日常の忙しい喧騒の中で聞こえなくなるもの、見えなくなるものがあります。森の中で聞こえてくるもの、見えてくるものに気づいてください。そのために最後の「感じている自分の気持ち」に気づいてその気持ちを言葉にしてみることが大切です。プログラムを終了した都度、参加者から感想を聴きます。気持ちを共有して自分の気持ちを再確認することが大事です。自分の感想を話す話さないかは参加者個々にお任せしています。たいがい、お話いただけています。
日常の生活で何かモヤモヤした気持ちを抱えている方、自分の気持ちや考えがなにか整理がつかないでいる方、心と身体が疲れている方、肩肘張って頑張っている方、もちろん自然が好きな方、自然に興味のある方も。一度森林セラピーを体験に来てください。森があなたの話を聴いてくれます。それは素直な自分、枠にとらわれない自分、自然体の自分、無理をしない自分、子供の心に戻る、誰かが決めたペースでなく自分のペースに戻ることであるかも知れません。
あなたの居場所を提供する安心した気持ちに戻ることかもしれません。参加者一人一人のあなただけのオリジナルな体験となります。
どんな言葉よりもどんな書物よりも、自然の森に素直に身を投げ出すことができれば、いわゆる「腑に落ちる」体験をすることができます。自然の持つ癒しの力とはあなたが本来持っている自然治癒力を高めて新しい力を与えてくれます。新しい力を自分のものにしてください。それが、森の優しさ、森の力、森の恵みです。